糖尿病治療

糖尿病治療

【図1】クリックで拡大

人間の体は、糖(グリコーゲン)を利用し生命活動を維持しています。糖は、細胞内・血管内に存在し検査にて血糖値(正常値:空腹時血糖110㎎/dL未満、糖負荷後140㎎/dL未満)として評価されます。
また、糖は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンで細胞内に取り込まれエネルギー源として利用されます。【図1】

糖尿病

糖尿病は、インスリンの作用不足による『慢性の高血糖状態によって様々な症状・合併症を生じる疾患』です。

インスリンの作用不足とは

  1. インスリンは体の中に存在しているが、十分に働かない状態(インスリン抵抗性)【図2】
  2. 体の中にインスリンが足りなりもしく、無くなった状態(絶対的【図3】 もしくは相対的不足【図4】)
  • インスリン抵抗性は、肥満等の生活習慣(2型糖尿病)や特殊な状態(体質・ホルモン異常)などで生じる状態です。
  • 絶対的もしくは相対的不足とは、体質(自己免疫:1型糖尿病)や長期間の糖尿病の血糖管理が悪い状態で膵臓のインスリン分泌力が低下(2型糖尿病)している状態です。

1型糖尿病はすぐにインスリンを使用しなければいけませんが、2型糖尿病は、状態に応じて内服やインスリンでの治療と異なります。
1型・2型以外には、その他の糖尿病(薬剤性・膵性・内分泌疾患に伴うもの)や妊娠糖尿病などがあります。

糖尿病、糖代謝異常の成因分類

  • Ⅰ. 1型
    (β細胞の破壊、通常は絶対的インスリン欠乏に至る)
  • A. 自己免疫性
  • B. 特発性
  • Ⅱ. 2型
    (インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で、それに相対的不足を伴うものなどがある)
  • Ⅲ. その他の特定の機序、疾患によるもの
    • A. 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
      1. 膵β細胞機能に関わる遺伝子
      2. インスリン作用の伝達機能に関わる遺伝子
    • B. 他の疾患、条件に伴うもの
      1. 膵外分泌疾患
      2. 内分泌疾患
      3. 肝疾患
      4. 薬剤や化学物質によるもの
      5. 感染症
      6. 免疫機序によるまれな病態
      7. その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うものが多いもの
  • Ⅳ. 妊娠糖尿病

糖尿病の自覚症状

血糖値が少し高くても自覚症状はありません。ただ、血糖値が非常に高い状態では、のどが渇いて、頻回に水分を摂取しトイレにも頻回に行く(口渇・多飲・多尿)ようになります。それが長期間続くと、体は徐々に痩せてきます(体重減少)。

これは、血液中の糖はいっぱい存在していますがインスリン作用不足により利用することができずに体はエネルギーを取り込めずに痩せていきます(体重減少)になりまた、血液中に糖が存在するので少しでも薄めるために尿として排泄(尿糖)とが見られます。インスリン作用不足が持続すると糖の代わりにその場しのぎとしてケトンという物質を産生しエネルギーとして利用します。しかしそれが長時間になると限界を超えてしまい意識がなくなります(糖尿病性ケトアシドーシス)。

糖尿病の治療を行っていくと、極端に血糖が低下して低血糖を生じます。低血糖では、血糖が下るほどに症状が出現します(動悸・冷や汗・不安→頭痛・カスミ目・異常感覚・意識障害 等)が、糖尿病の合併症が進行している患者さんや低血糖を繰り返している患者さんは、いきなりの意識障害で気づかれることもあります。

糖尿病の慢性の合併症

良く知られるところとして、細小血管障害(神経障害、網膜症、腎症)、大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞等)があげられます。
細小血管障害(神経障害、網膜症、腎症)
糖尿病神経障害は、慢性の高血糖により全身の末梢神経系が障害される慢性の合併症である。代表的な症状として両手指~手・足趾~足裏の障害(約20%で痺れ感、約80%で無自覚)。
糖尿病網膜症は、慢性の高血糖により眼の中の血管(網膜細小血管)が障害され眼(網膜や硝子体)に様々な障害を生じる。代表的な症状としては、突然の視力障害・失明などである(無自覚のうちに徐々に進行して突然に症状が出現)。
糖尿病性腎症は、慢性の高血糖により腎臓の尿を生成する糸球体という組織を傷害し進行すると尿を生成できなる状態(腎不全による透析)になる。
大血管障害(心筋梗塞脳梗塞等)
糖尿病の患者さんは、高血圧、高脂血症などの生活習慣病も合併し心筋梗塞や脳梗塞の危険性が糖尿病のない人より2~3倍高くなるといわれています。

糖尿病治療の目標

血糖、体重(内臓脂肪)、血圧、血清脂質の良好なコントロール状態を維持して、糖尿病細小血管合併症 (網膜症, 腎症, 神経障害)及び動脈硬化性疾患(虚血性心疾患, 脳血管障害,閉塞性動脈硬化症)の発症, 進展の阻止することで健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持,健康な人と変わらない寿命の確保といわれています。
血糖だけでなく血圧脂質等の管理を含め合併症を予防しましょうということですが、ご高齢の方は、低血糖による合併症予防も大切になります。その人、その人に合わせた管理目標となります。

一般的には、血糖値とHbA1cを用いて血糖管理を行います。
HbA1cは、過去の1~2か月の血糖の平均です。
合併症予防のために65歳未満では、HbA1c7%未満、65歳以上になると使用されている薬や患者さんの状態に応じて目標が変わります(7.0%未満の方から8.5%未満の方まで)。
ただし、全身麻酔での治療が必要になるような場合は、術後の合併症予防(感染や縫合不全予防)のために食前血糖120未満、食後血糖200未満、HbA1c6.5%未満が目標となります。